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セパの割り付け
型枠の壁には、向かい合った板の間にセパという金具が何十本も入っている。どこに何本入れるか。まみ社長はこれを「一番、頭の中に3Dが要るもの」と言う。
今回は、社長自身が図面を描きながら答えてくれた。聞き手はあみ。社長が最後まで言い切ったので、かたやんとべに子の出番はなかった。
この回で分かること
- 01セパ割りはベニヤ割りより先。最初に決めるのは高さではなく横の割りで、壁のど真ん中から左右対称に割る。
- 02打ち放し化粧の壁は、セパのピッチを途中で変えない。化粧でなければ、重さのかかる下を細かく、上を粗くする。
- 03頭の中の3Dは最初からあるものではない。仮に割り付けて、ダメなら直す。それを続けるうちに描けてくる。
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社長。この仕事で「これ、人に説明しにくいんだよな」と思っていることって、今回は何ですか。
どうしようかな。セパの種類やピッチ。面木・目地棒の必要性や考え方。一番最初に図面をもらったときに何を考えていくか。水勾配があるときの建て込みの仕方。墨出しの意識の仕方。
でもやっぱり、すべては頭の中で3Dが描けなきゃイメージできないのは事実だよね。頭に3Dを描けないものは難しいし、「よくわかんない」ってなっちゃうもんね。それは今の僕でも一緒だもんね。
いま挙げていただいた5つのうち、頭の中に3Dを描けないと一番わからなくなるのは、どれですか。
まあ、のだよな。
それから当然、とかがあるところは、頭に描けないとセパの位置も決められないし。そもそも枠の納まりも考えないよね。内面にするのか、正面にするのか。正面でも、貼り付けにするのか、平打ちにするのか。
いろいろと納まりを考えなきゃいけないからね。
では今回は「セパのピッチ」でいかせてください。社長がセパのピッチで一番悩むのは、どんな場面ですか。
やっぱりセパのピッチで悩む場面っていうのは、めちゃくちゃちっちゃい型枠の時か、めちゃくちゃ大きい型枠の時か。それから、か、打ちっぱなし化粧じゃないか。
これらによって考え方が変わってくる。
「めちゃくちゃ小さい型枠」というのは、たとえば建物のどこの型枠ですか。
小さい型枠っていうのは、例えば本当にちっちゃい壁、と言われるような壁(高さが100とか)、そういう小さい壁のことかな。あと段差とかも一緒になるかな。
それがなんで悩まなきゃいけないかというと、枠が小さすぎて金物が入らない難しさがある。
まず箱金物っていうのは隙間が70以上ないと金物が回せないんだよね。回す幅がなくてが邪魔になっちゃって回せないので、を使わなきゃいけないという場面になる。
さらにそこから小さいと、例えばさっき言ったように70が絶対必要な数字で、フォームタイの場合だったら50が必要な数字なんだけど、例えば桟木が25で上と下にくっついていると2本で厚み50でしょ。壁の高さが50だったら桟木で埋まっちゃうので、セパが取れない、フォームタイをつけるスペースすらないということになる。
こういうときはどうしようかなと悩む。
その「セパが取れない」にぶつかったとき、実際どうされましたか。
そうだね。高さ50の壁がいるんであれば、型枠自体、ベニヤを大きく作っておく。例えば50に対して80という高さの枠を作って、フォームタイで下ギリギリいっぱいのところを取る(セパを取る)という感じにしておく。要するに型枠の上を伸ばしておくっていう対処をする。
もしくは、高さが50というのであれば、25×50という桟木がありますので、その桟木に対してセパの12ミリというものを注文して、そこにフォームタイやで固定するっていう手法もないこともない。ただ、桟木のみで枠を作ってしまうので、足元にを打つ下地がないっていうデメリットがある。
これも状況によりけりだね。とかだったら今言った桟木で壁を作るっていう方法をするし、下にコンクリ釘が打てるよっていう場面であれば枠を高めに作るっていう対処をするかな。
逆に、めちゃくちゃ大きい型枠でピッチに悩むのは、どんな場所ですか。
大きい方で言うと、例えば壁厚が250くらいで高さが3.6mあるような壁があったとしましょう。
まずセオリーとしては、セパレーター(セパ)は600グリッド以下で考えるのが普通です。ただ、下の方には当然生コンが入ったときの・重さが加わってくるので、600グリッドでは厳しい場面が出てきます。そのため、下の方だけ例えば下から200、そこから450上がり、もう450上がり、今度は500、500、あとは600、600、600……といったピッチにするのが構造上のセオリーです。
もしこれが打ち放し化粧仕上げであれば、途中でセパの高さが変わってしまうとバランスが悪くなります。ベニヤの目地とセパの割り付け自体がデザインになるので、途中でピッチを変えるわけにはいきません。一番下は少なくとも200のところに配置しますが、そこから先は均等に割り付けていく必要があります。
イメージしてみてください。900×1800のベニヤを2枚積み上げて3.6mになるとします。上手に割るなら、おそらく300、600、600、600、600、600、300といくと綺麗に割れます。
しかし、今回は荷重が重い壁なので、足元には絶対にセパを取りたい。下から300浮かせるのは足元がズレてしまう恐れがあって怖いので、下から200の位置に打ちます。その次は下から900の位置を狙い、そこからは450ピッチで上がっていく。そうすることで、全体として450グリッドに見えるように設定したりすることがあります。これが打ちっぱなし(化粧の壁・デザイン壁)ではないのであれば、さっき言ったように450、450、500、500、600、600と言ってもらっても全く問題ない。
さらに言うと、この壁厚が例えば400くらいあって高さが4mとかになると、今度はもうのセパでは持たなくなってくる荷重計算になる。そうすると、普段使っている2分半という太さのセパではなくて、3分という太さのセパに切り替えてやっていく。
3分というセパを使うのは、1年でも1回あるかどうかくらいのボリューミーな壁だということを意識してもらえればいい。なので、ほとんどは2分半で僕らは済ませてしまう。
すみません、わたしの頭の中の3Dがまだ追いついていません。化粧の壁のとき、足元から何ミリの位置に1本目、2本目……と入るのか、下から順番に数字で言っていただけますか。
こんな感じ。

見えました。高さ4メートルの壁ですね。化粧じゃない壁は下から200、450、450、500、500、550、550、550、一番上が250。化粧の壁は200、そこから450が8つ続いて、一番上が200。
数えてみると、化粧の壁のほうがセパが1段多いです。その1段で、現場では何が変わりますか。
セパが少ない方がセパ代いらないし、締め方も一段減るので効率がかわります。
ちなみにベニヤ割も下に400がはいってるのにも理由があります。が上に2本来ると目立ちます。上に400があるとなんか中途半端にみえる。ので、足元に400が入っても人の目線よりも下なので認識されにくいという考え方が入ってます。

足元の400は、見る人の目線まで考えて置いていたんですね。
化粧の壁を割り付けるとき、社長はベニヤの割りとセパの位置、どちらを先に決めていますか。
から。
セパ割が先なんですね。それはどうしてですか。
これもやってみればすぐわかるんだけど、綺麗にベニヤを割り付けても、さっき言った端っこがぴったり収まるとは限らないんだよね。
1枚目の画像がバランスを取りにくいパターンの時、今書いてあるこれではダメなんだよね。2枚目の方は、たまたまうまく綺麗な枚数になっている時のパターン。
高さの設定というよりも、横割りの設定を一番最初にやる。


では1枚目の壁、右端の380が狭くてバランスが悪く見えるとき。社長はどこから手を入れて直しますか。
とりあえずベニヤ割りを先に変えちゃうよね。
だからさっき言ったように、セパ割りを決めてそれに対してベニヤ割りをするという方向になると、今の状態から均等にセパを横分配してあげるわけだよね。
そうすると、まずはこの壁に対して、ドセンターに1本ベニヤの目を入れるか。ドセンターに対して450を振って900の枠をつけて、両サイドに均等割を持っていくか。っていうような感じにする。意味わかる?
確かめさせてください。右端にだけ半端を寄せるのをやめて、壁のど真ん中を基準に左右対称に割っていく。そうすると半端が両端に同じ幅で出るので、見た目のバランスが揃う。こういうことですか。
そう、そういうことです。
できるだけ左右対称にするんだけど、その両サイドに出てくる補助が、なるべく900に近い数字、大きい数字である方をチョイスする。
そうした方が面が大きく見えるでしょ? 1枚目の画像と2枚目の画像がそういうこと。
バランスを見ると、やっぱり両サイドに大きいものがある方が綺麗に見えるでしょう?


はい。端に細い板があると、そこだけ目が止まってしまうんですね。
最初に「水勾配があるところは、頭に描けないとセパの位置も決められない」とおっしゃっていました。水勾配があると、セパの何が難しくなるんですか。
水勾配があるところって、外部面は地球と水平で、中は勾配があるっていうパターンが多いわけ。
なので、外部を水平に置いたところに対してセパを取っていくと、もし水平にセパを取ったらコンクリートの中に埋まってしまう部分が出てくる恐れがあるわけだよね。
勾配に対して水平セパを狙うのか、地球に対して水平に行くけど地面に食い込むあたりで一段上に上げるのか、という設定をしなければならない。意味わかる?
中の床は傾いているので、高い側へ行くほど床が上がってくる。一番下の段のセパを外に合わせて水平に通すと、床が高いところでは、セパが床のコンクリートの中に入ってしまう。
だから、セパの列を床の傾きに合わせて斜めに通すか、水平のまま通して、食い込むところだけ一段上げるか。そのどちらかを決める、ということですか。
正解です。さすが頭いい!
その二つのうち、社長はどちらを選ぶことが多いですか。選び分けるときの決め手も教えてください。
またこれも場面によるんだよね。勾配がきついパターンもあれば緩い時もあるし、さらにさっき言った打ちっぱなし(化粧)の時と化粧じゃない時でも違ってくる。話すとめちゃめちゃな量になるけど大丈夫かな?
まずは打ちっぱなし(化粧)で勾配が緩い(少ない)時。例えば高さを900とすると、セパは600グリッド以下なので2段になる。天端はフラットに通す(コンクリートの天端ね)。外部面は地球と水平、中は緩い勾配なので、上の段のセパは地球と水平に狙う。下の段のセパは緩い勾配と平行につける。同じパターンで勾配がきつい時も、全く同じ考え方で攻めます。
逆にこういうパターンにならない時。例えば壁の高さが300くらいの場合。外部は地球と水平、中はきつい勾配だと、セパが1段になるので、必然的に水勾配と平行にセパがつきます。
壁が600くらいで勾配が緩く、なおかつ打ちっぱなし(化粧)じゃない時。上の段は水平、下の段も水平だけど、食い込んだところあたりで200か300くらいセパを上げて水平にする。
どっちかっていうと、こっちの考え方(水平にする方)が現場では楽。さっき言った斜めにセパを通すのは、加工の時に手間がかかるけど精度は高いっていう感じだね。
外が水平・中が勾配で下の段のセパを水平にする時は、必ず合わなくなるので、セパ穴は現場で開けます。この時、枠の下端は勾配に切っていかないことの方が多い。
なぜかというと、勾配に切るとなると加工場でベニヤをもの凄くカットしなきゃいけないし、ベニヤのも下がる。そのあたりを考慮しつつ、打ち放し化粧でもないから下端のカットはせずに、勾配なりに枠を立てていくことになります。そのため、セパ穴が合わせられないということになります。
まあ絶対やれないってことはないけれど、現地のコンクリートの勾配がそんなにぴったり合っていないので、大概合いません。
最初に社長は「頭に3Dを描けないものは難しい。それは今の僕でも一緒だ」とおっしゃっていました。社長でも、いまだに3Dが描ききれなくて困るのは、どんな現場ですか。
やっぱり例えば、1本の柱に対して梁がいろんなサイズで、いろんな場所からくっついていくとき。なおかつ、それに勾配がついていたりするときだね。
いろんな高さのものがくっついていくときが、やっぱり難しい。
そういう柱にぶつかったとき、どうやって頭の中に描いていくんですか。
時間をかけて頭でイメージするんですよ。それしかないよ。
その時間の中で、最初にどこから描き始めますか。柱ですか、梁ですか。
当然、まず主軸の柱ですね。1本1本どういう風にくっついていくのか、仮でもいいので図面に割り付けしながら進んでいく。
ダメだったら修正する。割り付けて修正する、ということをやっている間に、だんだん頭の中に3Dが描かれてくる。
最後に一つだけ。若い職人さんも、同じやり方を続ければ、頭の中に3Dが描けるようになりますか。
同じやり方を続ければ、3Dは必ず描けるようになります。その3Dを描けるスピードが速いか遅いかは、個人差があるかもしれませんけどね。
一流のプロの職人さんは、一瞬で3Dに描いてくるよね。
以上、まみ社長の頭の中から、セパの割り付けをお届けしました。
取り出した判断表
「場面による」と言われていたものを、場面ごとに並べ直した。
高さ4メートルの壁のセパ位置
| セパの間隔(下から) | ベニヤ | |
|---|---|---|
| 化粧じゃない | 200・450・450・500・500・550・550・550・250 | 足元に400、その上に1800が2枚 |
| 打ち放し化粧 | 200・450が8つ・200 | 同じ。足元の400は目線より下なので目立たない |
足元は必ず200。化粧でなければ、重さのかかる下を細かく、上を粗くする。化粧なら途中で間隔を変えない。
小さい壁(雑壁・段差)
| 状況 | 対処 |
|---|---|
| 隙間が70以上ある | 箱金物 |
| 70はないが、50はある | フォームタイ |
| 桟木で埋まってしまう。足元にコンクリ釘が打てる | 枠を高く作り(高さ50に対して80)、下ぎりぎりでセパを取る |
| 桟木で埋まってしまう。浮き枠 | 25×50の桟木で壁を作り、12ミリ首長のセパをフォームタイかピーコンで固定する |
悩む理由は一つ。枠が小さすぎて、金物を回す場所がない。
水勾配のある壁(外は水平、中は勾配)
| 壁の高さ | 勾配 | 仕上げ | 上の段 | 下の段 |
|---|---|---|---|---|
| 900くらい(2段) | 緩い・きつい | 打ち放し化粧 | 水平 | 勾配と平行 |
| 300くらい(1段) | きつい | — | — | 勾配と平行 |
| 600くらい | 緩い | 化粧じゃない | 水平 | 水平。食い込むところで200〜300上げる |
現場で楽なのは水平にするほう。そのときは枠の下端を勾配に切らず、セパ穴は現場で開ける。斜めに通すのは加工の手間がかかるが、精度は高い。
割り付けの順番
社長の話を、決める順に並べた。
高さより先に、横を決める。壁のど真ん中を基準に、左右対称に割る。
両端に出てくる補助は、なるべく900に近い、大きい方を選ぶ。端に細い板があると、そこに目が止まる。
足元は200。打ち放し化粧なら、そこから先は均等。化粧でなければ、下を細かく上を粗く。
セパに合わせてベニヤを割る。半端の板は足元へ。人の目線より下なら、気づかれにくい。
「きれいにベニヤを割っても、端がぴったり収まるとは限らない」。だからベニヤからではなく、セパから決める。
この回に出てきた言葉
本文中の下線の言葉も、押すと説明が出ます。
- セパ(セパレーター)
- 向かい合った型枠の間に渡して、壁の厚みを保つ金具。これが無いと、流し込んだコンクリートに押されて型枠が膨らむ。
- ピッチ
- セパとセパの間隔。「600グリッド」は600ミリ間隔のこと。
- 水勾配(みずこうばい)
- 床や屋根にわざとつける傾き。雨水を排水口へ流すため。
- 打ち放し化粧(打ちっぱなし)
- タイルや塗装で仕上げず、コンクリートの面をそのまま見せる仕上げ。型枠の割付やセパの跡が、そのままデザインになる。
- 雑壁
- 建物の構造を支えていない、小さな壁。
- 桟木(さんぎ)
- ベニヤの裏に打つ細い角材。25×50などの寸法がある。
- フォームタイ
- セパの先に取り付けて、型枠を外から締める金具。
- 首長(くびなが)
- 先のねじ部分が長いセパ。桟木だけで作った枠など、厚みのあるところに使う。
- ピーコン(Pコン)
- セパの先端につける円錐形の部品。型枠を外したあと、壁に丸い凹みとして残る。
- コンクリ釘
- コンクリートに打ち込める硬い釘。型枠の足元を床に留めるのに使う。
- 浮き枠
- 床から浮かせて取り付ける型枠。足元が床に着いていないので、コンクリ釘で留められない。
- 側圧(そくあつ)
- 流し込んだコンクリートが、型枠を横へ押す力。下へ行くほど大きくなる。
- 2分半・3分
- セパの太さ。ふだんは2分半を使い、厚くて高い重い壁では、より太い3分に切り替える。
- ベニヤの目地
- ベニヤとベニヤの継ぎ目。打ち放し化粧では、この線がそのまま壁に残る。
- セパ割り
- セパをどこに何本入れるか決めること。打ち放し化粧ではセパの跡が壁に丸く残るので、割付がそのまま建物の顔になる。
- 転用率
- 同じベニヤを何回使い回せるか。細かく切るほど、次の現場で使えなくなる。
ダメだったら修正する。割り付けて修正する、ということをやっている間に、だんだん頭の中に3Dが描かれてくる。— まみ社長
職人の頭の中にしかない判断を、言葉と表にして残していく試みです。