在来型枠とは。日本の現場の標準。

Conventional Formwork

在来型枠とは。日本の現場の標準。

在来型枠とは、型枠用合板(コンパネ)に桟木を打ってせき板をつくり、端太とセパレーターで固定して組み立てる、日本の建築現場でもっとも広く使われている型枠工法である。木を刻んでどんな形にも合わせられる自由度と、合板を繰り返し使える経済性を併せ持つ。

Components

在来型枠を構成するもの。

在来型枠は一枚の板ではない。コンクリートの側圧という大きな力に対して、それぞれの部材が役割を分担して耐えている。

せき板(型枠用合板)

コンクリートに直接触れる板。厚さ12mmが標準。この面の出来が、そのまま躯体の面になる。

桟木

せき板の裏に打ち付けて剛性を持たせる角材。パネルの形を保つ骨になる。

端太(バタ)

せき板の裏に横方向に回して面を通す部材。木製のバタ角と鋼製の単管を組み合わせて使う。

セパレーター

対向するせき板の間隔を保つ鋼棒。壁厚を物理的に決めている要の部材。

フォームタイ

セパレーターと端太を外側から締め付ける金具。締め不足は「はらみ」、締めすぎは変形を招く。

Pコン

セパレーター先端の円錐部品。脱型後に残る丸い跡が、打放しでは意匠の一部になる。

パイプサポート

スラブや梁の型枠を下から支える支柱。根がらみを入れて倒れを防ぐ。

根太・大引

スラブ型枠を受ける横架材。ピッチを誤るとスラブが垂れ、天端レベルが狂う。

面木・目地棒

出隅の欠けを防ぐ三角材と、意匠の目地を切る部材。通りの良さが仕上がりを決める。

剥離剤

せき板とコンクリートの縁を切る薬剤。塗りムラは、そのままコンクリートの肌のムラになる。

Economy

転用という考え方。

在来型枠の経済性を支えているのが「転用」である。一度使った合板を清掃・補修して、次の階、次の部位へ使い回す。同じ形が積み上がるマンションのような建物では、転用回数が工事原価を大きく左右する。

ただし転用は無限ではない。使うたびに表面は傷み、角は欠け、剥離剤の乗りも悪くなる。何回まで使うかは、その面が最終的にどう仕上げられるかで決まる。仕上げ材で隠れる面なら転用を重ねられるが、打放しの面には新品に近い合板を回す。

この判断を現場で誰が下すか。そこに型枠会社の質が出る。転用を惜しんで仕上がりを落とすのも、逆に不必要に新品を使って原価を膨らませるのも、どちらも職人の仕事ではない。

Exposed

打放しは、在来型枠の独壇場。

コンクリートの表面に何も貼らず、脱型した面をそのまま仕上げとする——打放しコンクリート。これができるのは在来型枠だけだ。

せき板の継ぎ目の線、Pコンの円形の跡、面木が切る出隅の稜線。そのすべてが、完成後に意匠として残り続ける。割付け図を引く段階から、意匠設計者と歩調を合わせる必要がある。

ここでは「精度が高い」では足りない。通りが揃っているか、目地が一直線に抜けているか、Pコンの並びが整っているか。つまり型枠の仕事が、そのまま建築の顔になる。

型枠大工の技量がもっとも露骨に表れるのが、打放しの現場である。

Selection

ラス型枠との使い分け。

在来型枠が強い場面と、ラス型枠に譲るべき場面。判断の軸を整理した。

こういう場面では選ぶのは理由
コンクリートを見せる壁在来型枠打放し仕上げができるのは在来型枠だけ
同じ形が何層も積み上がる在来型枠転用が効き、原価を大きく下げられる
土に埋まる基礎・地中梁ラス型枠肌を見せる必要がなく、脱型の手間が丸ごと消える
人が入れない狭い場所ラス型枠脱型のための作業スペースが不要になる
次のコンクリートを打ち継ぐ面ラス型枠粗面になり、後打ち分との付着が良い
曲面・段差・型押しラス型枠形状への追従性が高く、加工が簡潔に済む

Difficulty

自由度が高いということは、難しいということ。

在来型枠は、木を刻めばどんな形にも対応できる。だがそれは裏を返せば、寸法も納まりも職人が毎回決めなければならないということだ。決まった形のユニットを並べるだけの仕事ではない。

図面から割付けを起こし、パネルを設計し、加工寸法を決め、他職との取合いを調整する。現場に立つ前の頭の中の作業量が、そのまま仕上がりに直結する。段取り八分と言われる所以はここにある。

そして一度コンクリートを流せば、やり直しはきかない。在来型枠の自由度は、職人の判断力を前提として初めて成立している。

よくある質問

在来型枠とは何ですか?

在来型枠とは、型枠用合板(コンパネ)に桟木を打ってせき板をつくり、端太・セパレーター・フォームタイで固定して組み立てる、日本でもっとも一般的な型枠工法です。柱・梁・壁の一般部に広く使われ、打放しコンクリート仕上げにも対応できます。

型枠用合板の厚さは何mmですか?

厚さ12mmが標準です。用途に応じて表面加工の有無を使い分け、打放し仕上げの面には新品や塗装合板を回すなど、仕上げの要求に応じて選定します。

型枠の転用は何回までできますか?

一律には決まりません。その面が最終的にどう仕上げられるかで判断します。仕上げ材で隠れる面なら転用を重ねられますが、打放しの面には新品に近い合板を使います。使うたびに表面は傷み、角は欠け、剥離剤の乗りも悪くなるためです。

セパレーターとフォームタイの違いは何ですか?

セパレーターは対向するせき板の「間隔を保つ」鋼棒で、壁厚を決めています。フォームタイはそのセパレーターと端太を「外側から締め付ける」金具です。セパレーターが内側から突っ張り、フォームタイが外側から引く。この2つでコンクリートの側圧に耐えています。

打放しコンクリートは在来型枠でしかできないのですか?

はい。打放しは脱型した面をそのまま仕上げとする工法なので、型枠を残すラス型枠では対応できません。せき板の継ぎ目、Pコンの跡、面木の通りがすべて意匠として残るため、割付け図の段階から意匠設計と調整しながら進めます。