
The Art of Formwork
型枠という仕事。
形なきものに、形を与える。
型枠とは、コンクリートを流し込んで所定の形に固めるための「型」である。そして型枠工事とは、その型を設計図の通りに組み立て、コンクリートが固まった後に外す(あるいは埋設したまま残す)一連の工事を指す。建物の骨格=躯体の形と精度は、この工事で決まる。
コンクリートは、流し込んだだけでは建物にならない。壁の厚さ、柱の太さ、梁の位置。すべての「形」を正確に決めるのが、型枠という仕事だ。
型枠大工は、設計図面を読み解き、木材やパネルを使って「型」をつくる。その型にコンクリートを流し込み、固まったら型を外す。現れるのは、設計通りの美しいコンクリートの壁や柱。つまり型枠とは、建物の骨格そのものを創る仕事である。
そして型枠は、やり直しがきかない。コンクリートは一度固まれば元には戻らない。鉄筋や設備であれば施工後の手直しも可能だが、型枠のズレはそのまま躯体のズレとして残り続ける。100年先まで建物に刻まれる。だから型枠大工は、組み上がる前の段階で完璧を求める。
マンション、学校、病院、物流施設。あなたが毎日目にする建物の骨格は、型枠大工の手によって形づくられている。
Methods
型枠工事の工法。
ひとくちに型枠といっても、工法は一つではない。建物の形、部位、工期、コスト、そして現場の条件。それらを見て最適な工法を選ぶところから、型枠工事は始まっている。
金網(ラス)状の板を型枠として使い、コンクリートが固まった後もそのまま躯体に残す「埋設型枠」。解体が不要なため、脱型・運搬・廃材処理の工程がまるごと消える。材料が軽く、女性や経験の浅い職人でも扱いやすい。網目からコンクリートの充填状況が見えるので、充填不良の発見も早い。打継ぎ面が粗面になり、後打ちコンクリートとのなじみが良いのも利点。
特長
- —脱型・解体が不要
- —材料が軽く施工が速い
- —産業廃棄物がほとんど出ない
- —狭い場所・複雑な形状に強い
- —充填状況を目視で確認できる
主な採用部位
- —基礎・地中梁
- —打継ぎ部
- —擁壁・ピット
- —狭小部・逆打ち部分
- —型押し・段差のある箇所
型枠用合板(コンパネ)に桟木を打ち、せき板をつくって組み立てる、日本の現場で最も広く使われている工法。平面的な壁・柱・梁に適し、寸法の自由度が高い。転用(繰り返し使用)ができるためコストを抑えやすい反面、加工・建込み・脱型・解体と工程が多く、人と時間がかかる。仕上がり面の精度は職人の腕に直結する。
特長
- —どんな形状にも合わせられる
- —材料の入手が容易
- —転用によりコストを抑えられる
- —打放し仕上げに対応できる
主な採用部位
- —マンション・集合住宅の躯体
- —学校・病院などの公共建築
- —柱・梁・壁の一般部
- —打放しコンクリート仕上げ
System Formwork
システム型枠
ユニット化された大型パネルで、大面積を一気に。
あらかじめユニット化された大型パネルをクレーンで揚重し、面単位で建て込む工法。大壁・コア・基礎など同じ形が繰り返される部位で圧倒的に速い。初期の割付け計画が命で、ここを外すと現場で手直しが発生する。物流施設や大規模倉庫のように、同一形状が反復する建物で効果が大きい。
特長
- —大面積を短工期で施工できる
- —精度が安定する
- —人力作業と高所作業を減らせる
主な採用部位
- —物流施設・大規模倉庫
- —コア部・エレベーターシャフト
- —大型擁壁・基礎
Exposed Concrete
打放し型枠
型枠がそのまま、建物の仕上げになる。
コンクリートの表面に塗装やタイルを貼らず、脱型した面をそのまま仕上げとする工法。せき板の継ぎ目、Pコンの位置、面木の通り、すべてが完成後の意匠として残る。つまり型枠の精度=建築の意匠そのものになる。割付け図の段階から意匠設計と歩調を合わせる必要があり、型枠大工の技量がもっとも露骨に表れる仕事。
特長
- —仕上げ材が不要
- —コンクリート本来の意匠が出せる
- —型枠精度がそのまま価値になる
主な採用部位
- —意匠性の高い建築
- —壁面・階段・外構
- —店舗・ギャラリー
Precision
1mmのプライド。
型枠の精度は、1mm単位で管理される。足元のズレ、出隅のズレ、垂直のズレ。わずかな狂いが、建物全体の品質を左右する。
コンクリートは一度固まれば、やり直しがきかない。だからこそ、型枠を組む段階で完璧を求める。コンベックスで測り、下げ振りで垂直を確認し、何度も何度も精度を追い込む。
型枠がズレれば、鉄筋のかぶり厚が確保できなくなる。かぶり厚が足りなければ、鉄筋はやがて錆びる。型枠の1mmは、意匠の問題ではなく、建物の寿命の問題だ。
その1mmへのこだわりが、100年先の安全を支えている。
社内精度管理基準
下げ振りによる垂直管理
レベルによる天端・陸墨管理
コンベックスによる部材寸法管理
公共建築工事標準仕様書やJASS 5に定められた躯体の許容差よりも厳しい値を社内基準とし、打設前に全数を確認している。
Materials
型枠をつくるもの。
型枠は一枚の板ではない。せき板を支え、間隔を保ち、側圧に耐えるための部材が、それぞれの役割を持って噛み合っている。道具と材料の名前を覚えることが、型枠大工の第一歩になる。
せき板
コンクリートに直接触れる板。型枠用合板(コンパネ)やラス板を使い、この面の精度がそのまま躯体の面になる。
型枠用合板(コンパネ)
厚さ12mmが標準。表面加工の有無で仕上がりが変わる。打放しでは新品や塗装合板を使い分ける。
桟木・端太(バタ)
せき板の裏に回して面を通し、コンクリート圧に耐えさせる部材。木製のバタ角と鋼製の単管を組み合わせる。
セパレーター
対向するせき板の間隔を保つ鋼棒。壁厚を決める要で、これがズレれば壁厚がズレる。
フォームタイ
セパレーターと端太を外側から締め付ける金具。締め不足は「はらみ」、締めすぎは変形を生む。
Pコン
セパレーターの先端に付ける円錐状の部品。脱型後に残る円形の跡が、打放しでは意匠の一部になる。
パイプサポート
スラブや梁の型枠を下から支える支柱。支保工の中心で、建地の垂直と根がらみが安全の生命線。
単管・クランプ
端太や支保工を組むための鋼管と接合金具。締付けトルクの管理が精度と安全を左右する。
根太・大引
スラブ型枠を受ける横架材。ピッチを誤るとスラブが垂れ、天端レベルが狂う。
面木・目地棒
出隅の欠けを防ぐ三角材と、意匠の目地を切るための部材。打放しでは通りの良さが問われる。
剥離剤
せき板とコンクリートの縁を切る薬剤。塗りムラはそのまま肌のムラになる。
下げ振り・レベル・コンベックス
垂直・水平・寸法を確認する道具。型枠大工の精度は、最終的にこの3つの使い方に帰着する。
Planning
段取りがすべて。
現場が始まる前に、勝負は決まっている。図面を読み、材料を拾い出し、工程を組む。頭の中で建物を一度完成させてから、初めて現場に立つ。それが型枠大工の「段取り」だ。型枠工事は、次の7つの工程で進む。
拾い出し・施工図
設計図から型枠の割付けを起こし、必要な材料の種類と数量を算出する。ここで建物を一度、頭の中で完成させる。
躯体図をもとに、せき板・端太・セパレーター・支保工の数量を部位ごとに拾う。割付け図の精度が、その後の加工・建込み・手直しのすべてを決める。段取り八分と言われる所以はここにある。
加工
合板やラス板を寸法通りに切断し、桟木を打って型枠の部材をつくる。
加工場または現場の加工ヤードで、割付け図の通りにパネルを製作する。1枚の寸法違いが建込みの現場で連鎖するため、この段階での確認が最も安い。
墨出し
基準となる通り芯と高さを、実際の床面に印す。すべての精度はこの墨から始まる。
通り芯・返り墨・陸墨を出し、柱・壁の位置を確定させる。墨が1mmズレれば、その上に建つ型枠はすべて1mmズレる。型枠工事で最初にして最大の分岐点。
建込み
加工した部材を現場で組み立て、型枠を建てていく。
墨に合わせてせき板を建て、セパレーターで厚みを決め、端太とフォームタイで締める。下げ振りで垂直を、レベルで天端を確認しながら進める。鉄筋・設備との取合いを外さないことが要点。
締固め・精度確認
コンクリート圧に耐えられるよう固定し、垂直・水平・寸法を最終確認する。
支保工を組み、根がらみを入れ、はらみ止めを効かせる。打設時にかかる側圧は想像以上に大きく、ここを疎かにすると型枠が膨らみ、あるいは倒れる。安全と品質が同じ作業に同居する工程。
コンクリート打設
打設に立ち会い、型枠の挙動を見張る。異常があればその場で止める。
打設速度・バイブレーターの掛け方で型枠にかかる力は変わる。型枠大工は打設中も現場に残り、はらみ・浮き・漏れを監視して即座に手当てする。ここまでが型枠の仕事。
脱型・解体
所定の強度・存置期間を満たしてから型枠を外し、転用または処分する。
せき板の最小存置期間は、コンクリートの種類と平均気温で定められている(普通ポルトランドセメントで平均気温20℃以上なら4日、10℃以上20℃未満なら6日が一般的な目安)。スラブ下・梁下の支保工は、所定の圧縮強度が確認できるまで外さない。ラス型枠の場合、この工程自体が不要になる。

Capability
どんな建物を、
建ててきたか。
愛知県を中心に、東海エリアのRC造建築物の型枠工事を手がけてきた。マンション・集合住宅、学校・病院などの公共建築、物流施設・大規模倉庫、商業施設、工場、擁壁・土木構造物。
その積み重ねは318件を超える。工法を選べること、そして選んだ工法をやり切れること。その両方があって初めて、施主と元請の期待に応えられる。
施工実績を見る
Achievement
型枠を外した瞬間の、
あの達成感。
コンクリートが固まり、型枠を外す。その瞬間に現れる、美しいコンクリートの肌。自分たちが組み上げた「型」が、そのまま建物の形になっている。
この達成感は、型枠大工にしかわからない。そしてこの瞬間があるから、また次の現場に向かえる。
この仕事に挑戦するGlossary
型枠用語集。
現場で飛び交う言葉は、外から見れば暗号に近い。これから型枠の世界に入る人、図面の打合せで言葉に迷った人のために、基本の用語をまとめた。
型枠(かたわく)
katawakuコンクリートを所定の形に固めるための型。せき板と支保工で構成される。
型枠大工
katawaku daiku型枠の施工図・加工・建込み・解体を担う専門職人。躯体の形と精度を決める。
躯体(くたい)
kutai建物の骨格となる構造部分。柱・梁・壁・スラブ。型枠工事はこの躯体をつくる工事。
せき板
sekiitaコンクリートに直接接する板。この面の出来がそのまま躯体の面になる。
支保工(しほこう)
shihokou型枠を支える仮設の支柱・梁。パイプサポートや枠組支保工など。
墨出し
sumidashi図面上の位置を現場の床や壁に実寸で印す作業。すべての精度の基準。
建込み(たてこみ)
tatekomi加工した型枠部材を現場で組み立てて建てる作業。
脱型(だっけい)
dakkeiコンクリート硬化後に型枠を取り外すこと。「バラシ」とも呼ぶ。
存置期間
sonchi kikanコンクリート打設後、型枠を外さずに置いておく期間。気温とセメントの種類で決まる。
セパレーター
separator対向するせき板の間隔(壁厚)を保持する鋼棒。通称「セパ」。
フォームタイ
form tieセパレーターと端太を締め付ける金具。型枠のはらみを止める。
Pコン
P-coneセパレーター先端の円錐部品。脱型後に残る丸い凹みは打放しの意匠になる。
端太(ばた)
bataせき板の裏に回して面を通す横架材。木製のバタ角と鋼製の単管がある。
根がらみ
negarami支保工の足元を水平材でつなぎ、倒れを防ぐ補強。安全上きわめて重要。
はらみ
haramiコンクリートの側圧で型枠が外側に膨らむ現象。締付け不足が原因。
打設(だせつ)
dasetsu型枠内に生コンクリートを流し込む作業。
打継ぎ
uchitsugi先に打ったコンクリートに後から打ち継ぐ部分。一体性の確保が課題になる。
ジャンカ
jankaコンクリートが充填されず、砂利が露出した状態。豆板とも。締固め不足で生じる。
かぶり厚
kaburi atsu鉄筋表面からコンクリート表面までの厚さ。型枠位置がズレると確保できなくなる。
出隅・入隅
desumi / irisumi壁の外向きの角と内向きの角。通りと直角がもっとも目立つ箇所。
天端(てんば)
tenba部材の上端の高さ。レベルで管理する。
面木(めんぎ)
mengi出隅に入れる三角の部材。角の欠けを防ぎ、線を通す。
拾い出し
hiroidashi図面から必要な材料の種類と数量を読み取り、算出する作業。
段取り
dandori着手前に工程・材料・人員・手順を組み立てること。型枠工事の成否を決める。
Deep Dive
もっと詳しく。
このページで足りない部分は、テーマごとに一枚ずつ書いた。工法の中身、工事の進み方、現場の言葉、そして職人になる道のり。
よくある質問
型枠とは何ですか?
型枠とは、コンクリートを流し込んで所定の形に固めるための「型」のことです。木材や金属パネル、金網状のラス板などを使って建物の柱・梁・壁・床の形をつくり、コンクリートが固まった後に取り外します(または埋設したまま残します)。建物の形状と精度を決める、建設工事の中でもっとも重要な工程の一つです。
型枠大工とはどんな仕事ですか?
型枠大工は、設計図面を読み解いて施工図を起こし、型枠の加工・墨出し・建込み・締固め・解体までを行う専門職人です。1mm単位の精度管理が求められ、建物の品質と安全を左右します。コンクリートは一度固まるとやり直しがきかないため、型枠を組む段階での精度がそのまま建物の精度になります。
型枠工事の流れを教えてください。
型枠工事は、①拾い出し・施工図(図面から材料を算出)、②加工(部材の切断・組立)、③墨出し(位置の印付け)、④建込み(型枠の組立)、⑤締固め・精度確認(支保工と固定)、⑥コンクリート打設(流し込みへの立会い)、⑦脱型・解体(型枠の取り外し)の順で進みます。ラス型枠工法の場合は⑦の解体が不要です。
在来型枠とラス型枠の違いは何ですか?
在来型枠は型枠用合板(コンパネ)を使う一般的な工法で、平面的な壁や柱に適し、転用によってコストを抑えられます。ラス型枠は金網状のラス板を使う埋設型枠で、コンクリート硬化後もそのまま躯体に残すため脱型・解体が不要です。材料が軽く施工スピードが速い、産業廃棄物がほとんど出ない、狭い場所や複雑な形状に強い、網目から充填状況を目視確認できる、といった利点があります。馬見塚建設は両方の工法に対応しています。
ラス型枠は外さなくても大丈夫なのですか?
はい。ラス型枠は外さないことを前提とした「埋設型枠」です。コンクリートと一体化して躯体の一部となるため、構造上の問題はありません。打継ぎ面が粗面になることで、後から打つコンクリートとのなじみが良くなるという利点もあります。基礎・地中梁・擁壁・ピットなど、脱型のために人が入りにくい箇所で特に有効です。
型枠はいつ外せますか(存置期間)?
せき板の最小存置期間は、コンクリートの種類と平均気温によって定められています。普通ポルトランドセメントの場合、平均気温20℃以上で4日、10℃以上20℃未満で6日が一般的な目安です。また所定の圧縮強度が確認できれば、それをもって外す判断もできます。スラブ下・梁下の支保工は、設計基準強度に応じた強度が確認できるまで存置します。現場ごとに仕様書で定められた条件に従って判断します。
型枠大工になるには資格が必要ですか?
型枠大工として働き始めるのに資格は必要ありません。経験を積みながら、型枠支保工の組立て等作業主任者、足場の組立て等作業主任者、玉掛け、職長・安全衛生責任者といった資格を順に取得していくのが一般的です。技能を証明する国家資格として型枠施工技能士(1級・2級)があります。馬見塚建設では資格取得を会社が支援しています。
未経験でも型枠大工になれますか?
なれます。馬見塚建設の職人も、多くが未経験から始めています。特にラス型枠は材料が軽く扱いやすいため、体力に自信がない方や女性でも入りやすい工法です。最初は材料の名前と道具の使い方から覚え、墨出しや建込みへと段階的に仕事の幅を広げていきます。
型枠工事の工期はどのくらいかかりますか?
建物の規模・階数・構造・工法によって大きく変わります。一般的なマンションでは1フロアあたり2週間前後のサイクルで、型枠・鉄筋・設備・打設を繰り返して積み上げていきます。ラス型枠やシステム型枠を採用できる部位では、脱型・解体工程が減るため工期短縮につながります。具体的な工期は図面を拝見したうえでお見積りいたします。
対応エリアと対応できる建物を教えてください。
愛知県を中心に、東海エリアのRC造建築物の型枠工事に対応しています。マンション・集合住宅、学校・病院などの公共建築、物流施設・大規模倉庫、商業施設、工場、擁壁・土木構造物など、300件を超える施工実績があります。詳しくは施工実績のページをご覧ください。
型枠工事の費用はどのように決まりますか?
型枠の施工面積(㎡)を基本に、工法、階数、形状の複雑さ、転用回数、施工条件(狭小地・高所・夜間など)、工期を加味して算出します。同じ面積でも、反復形状の多い建物と複雑な意匠の建物では手間が大きく異なります。図面をご提示いただければ、拾い出しのうえでお見積りをご提出します。
型枠と鉄筋、どちらを先に施工しますか?
部位によって異なります。壁の場合は「片側の型枠を建てる→鉄筋を組む→もう片側の型枠を建てる」という順が一般的です。柱は鉄筋を組んでから型枠で囲み、スラブは型枠(デッキ・合板)を先に敷いてから配筋します。いずれの場合も型枠と鉄筋は同じ現場で並行して進むため、相互の取合いと段取りの調整が品質を左右します。